雄鶏社 刺繍通信・創刊号
このページのイラストレーションに描かれているもの
刺繍 ベア 子供
わざと雑っぽくすることで街や暮しにうまく溶け込むように思います。
山口マナビさん(イラストレーター)
「これ、きのう着ちゃったんです。」と照れながら広げたTシャツ。胸元の愛くるしいバンビの刺しゅうは彼の手によるものだ。
山口マナビさんは刺しゅう歴1年。イラストレーターである彼が、そもそも針と糸を操るようになったきっかけは?
「自分の描いたイラストを、ポロシャツのワンポイントみたいに刺しゅうできたら面白いかな、と20年以上フランス刺しゅうをやっている母に刺してもらったんです。自分でも、と思ってやってみたら、案外簡単にできてしまって。」
いつも身近に見ていた刺しゅうだから、特別なもの、という意識は全くなかったという。
山口さんの作品は、Tシャツにしても、年賀状など印刷することを前提にした作品にしても、そのほとんどがワンポイント刺しゅう。
「すぐ出来て、画面がもつ」というのがその理由。
「最初に画面全体で捉えて、どんな図案を、どんな糸の色で、まわりをどういう風に見立てて、どんなバランスでレイアウトするか、というようなことを考えます。」
レイアウトが決まったら、東京タワー、金魚、ルビイ、すずめ、ワニなどなど、様々なモチーフを繊細なラインで描き出し、ひと針ひと針はみ出さないように埋めていく。その大きな手からは想像できない細かい手仕事ぶりにはため息がでるほど。
「図案が小さいものが多いので、あんまり隙間がくっついた図案だと、糸を刺しているうちにつぶれちゃう。人物とか動物だと、ちょっとずれるだけで、全然表情が変わっちゃうので、そういうことに気をつけて図案を描くようにしています。」
「刺しゅうのプロではないので、難しい話は抜きにして・・・」と謙遜しつつも、イラストレーターとしてはさすがプロ。経験に基づくこだわりとセンスが光る。
今後、刺してみたいものは?
「マスクに唇とか刺してみたい(笑)。」
刺しゅうという新たな表現法法を見つけた山口さんの創造力はとどまるところを知らない。
「アンコが詰まっているので刺しやすかった」というテディベア。 既製品にちょこっと刺しゅうをするだけで ぐっと気のきいたプレゼントに。
「刺し終わって糸の始末をするために裏を見たとき 思ってもいなかった刺し跡ができていて そのざくざくとした雰囲気が逆に面白いと思いました。 形が太って崩れたり、糸の目が汚くならないように 注意して刺していたのとは180度違った いききとした楽しい感じがしたからです。 これは最終的に裏の刺し跡を完成品とするために刺しました。 わざと雑っぽくすることで街や暮しに溶け込むように思います。」
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